ドイツ史④(皇帝フリードリヒ・バルバロッサ)
---ヴェルフ家とシュタウフェン家---
カノッサの屈辱に代表される教皇と皇帝の対立ですが、その実は諸侯と皇帝の綱引きだったといってもかもしれません。 皇帝に対抗した諸侯の最大勢力がザクセン公でした。

ザーリアー朝が断絶すると、その最大勢力ザクセン公ロタール3世が即位します。 ロタール3世には嫡子がなく、一人娘の嫁ぎ先である ヴェルフ家のハインリヒ尊大公を跡継ぎに望みます。

が、ハインリヒ尊大公はザクセン公とバイエルン公を兼ねており、皇帝ともなれば大きな力をもつことは明白でした。 そのため、諸侯はこの強力な皇帝の出現を警戒し、シュタウフェン家のコンラート3世を皇帝に推戴します。 当然ながら、ヴェルフ家は反発し、シュタウフェン家との長い抗争が始まることになります。

実はコンラート3世は、かつてロタール3世と帝位を争った宿敵で、ロタール3世が最も跡継ぎに望まなかった人物といっていいでしょう。 また、カノッサの屈辱で有名な皇帝ハインリヒ4世の孫でもありました。 ハインリヒ4世が屈辱を味わったのも、ザクセン公が教皇に味方したためだったことを思えば、 この争いは、ハインリヒ4世の時代に始まっていたといってもいいかもしれません。 そして、争いは次代に持ち越されることになります。

---ハインリヒ獅子公の都市建設---
ヴェルフ家の後を継いだのが、有名なハインリヒ獅子公です。 ハインリヒ獅子公はドイツにとって重要な都市を建設しています。 1157年に建設したミュンヘンと1159年に建設したリューベックがその代表でしょう。

ハインリヒ獅子公は経済感覚に優れた領主と言われていますが、その彼が着目したのがです。 中世の欧州にあって塩は、『白い黄金』と呼ばれるほど重要な交易品でした。

オーストリアのザルツブルクに集められた塩は、ミュンヘン近郊を流れるイザール川を渡り、北へと運ばれていました。 ハインリヒ獅子公は、自領であったミュンヘンに橋や倉庫を作ると、その周辺の橋や倉庫を全て破壊。 塩が必ずミュンヘンを通るように仕向けたのです。塩が集まれば、商人が集まり、市ができ、ミュンヘンは ドイツ有数の大都市へと変貌を遂げることになります。 後のバイエルン王国首都としての基礎はこのときに築かれたわけです。

同様に、リューベックも元は小さな村に過ぎなかったのですが、天然の良港であることに加え、 リューネブルクという塩の一大生産地を後背に抱えていたのです。ここに目を付けたハインリヒ獅子公は 本来の領主にここを譲るよう圧力をかけ、譲り受けるや否や立派な港を建設。 リューネブルクの塩を輸出するのに格好の港に商人が集まり、塩の輸出を独占するようになり、 リューベックは大きく発展していくことになります。

いずれのやり方も少々強引で、そのことが後のハインリヒ獅子公の運命に影を落とすことになるのですが、 その前に、そのライバルのほうに目を向けてみましょう。

---皇帝フリードリヒ・バルバロッサ---
一方、コンラート3世が後継者に指名したのが甥で、中世ドイツ騎士道の華と謳われるフリードリヒ1世、通称 フリードリヒ・バルバロッサです。 バルバロッサとは赤髭の意味です。

フリードリヒ・バルバロッサがまずやったのがハインリヒ獅子公との和解でした。 獅子公との和解で、国内を固めた皇帝バルバロッサは、ローマ皇帝としての悲願であるイタリア支配を達成すべく、 イタリア遠征に乗り出します。

が、そのことはローマ教皇との対立を招くことになります。 また、1168年に北イタリア諸都市がロンバルディア同盟を結成して、バルバロッサに対抗。 領主の力が弱かった北イタリアでは早くに都市国家が発展しており、皇帝の介入を望まなかったのです。

北イタリア諸都市を屈服させるために、皇帝バルバロッサは獅子公に出兵を要請。 が、国内に関心がある獅子公はそれを拒否。 勇猛なザクセン兵を抱える獅子公の援軍を得られなかったバルバロッサはロンバルディア同盟軍に敗れます。

そして、その怒りは獅子公へと向かいました。 獅子公が強引なやり口で諸侯の反感を買っていたことを利用して、獅子公を追い落とします。 こうして、大きな力をもった獅子公はイギリスへの亡命を余儀なくされました。 強引なやり口があだになったわけです。

さて、皇帝バルバロッサです。第3回十字軍に参加して、聖地エルサレムを目指します。 が、その途上の1190年、小アジアで誤って溺死するという悲劇に遭います。

十字軍で非業の死を遂げたバルバロッサはドイツ騎士文化の象徴のような存在であり、有名な民間伝承が伝えられています。 ドイツに危機が迫ると、鷲が眠れるバルバロッサにそれを告げ、祖国を救うためバルバロッサは再び蘇る、と。 中国は金と南宋の南北朝時代、日本は鎌倉幕府が開かれる直前という時期のことです。

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