ドイツ史⑬(諸侯の時代)
---バイエルンとプファルツの統一---
ドイツきっての名門ヴィッテルスバッハ家も、1329年にバイエルン系とプファルツ系に分裂して以来、
両家は激しく対立していました。プファルツ系ヴィッテルスバッハ家は、三十年戦争の最中に一度選帝侯位を失うものの、その講和条約で 選帝侯位を回復。これが1648年のことです。 それから37年後の1685年にプファルツで直系が断絶すると、隣国フランスの太陽王ルイ14世が プファルツに対する野心を露わにしたことから、プファルツ継承戦争が始まります。 ルイ14世の拡大政策に危機感を抱くドイツ諸侯は結束し、またフランスの宿敵であるオーストリア・ハプスブルク家も 強調して反フランスで一致。 戦争の経過もフランスの思うようには進まず、結局プファルツ系ヴィッテルスバッハ家の傍流がプファルツを継承することを フランスが認め、和平が成立します。プファルツの伝統はカルヴァン派のプロテスタントですが、この新たなプファルツ選帝侯は カトリックで、以後プファルツはカトリック国となります。また、1720年には宮廷がハイデルベルクから マンハイムへ移っています。 ところで、プファルツ系ヴィッテルスバッハ家の傍流からスウェーデン王家が出ていることを付記しておきましょう。 英雄グスタフ・アドルフ亡き後、スウェーデンに招かれて1654年から1720年まで続き、バルト帝国と呼ばる覇権国家を 築き上げています。 一方のバイエルン系ヴィッテルスバッハ家ですが、三十年戦争の最中に選帝侯位を認められ、徐々に帝国内での影響力を強めていきます。 1740年、オーストリアでマリア・テレジアが即位すると、プロイセン王国がそれに反発して兵を挙げます。 いわゆるオーストリア継承戦争です。 ハプスブルク家のマリア・テレジアは、夫のフランツ・シュテファンの皇帝につけようと画策しますが、密かに帝位を狙う バイエルン公カール・アルブレヒトは、それを好機とみて挙兵。1742年には皇帝に選出されます。 ルクセンブルク家が断絶して以来、唯一ハプスブルク家以外から選出された皇帝が彼です。 が、それに対するマリア・テレジアの反応は早く、ハンガリー議会で大演説をし、ハンガリーの援軍を得ると、 フランスと結んだバイエルン軍を撃破。カール・アルブレヒトは失意のうちに死去し、マリア・テレジアの夫である フランツ・シュテファンが結局帝位に就くことになります。 1777年にバイエルン系ヴィッテルスバッハ家が断絶すると、プファルツ選帝侯のカール・テオドールがバイエルン選帝侯をも 兼ねるようになり、約450年ぶりに両ヴィッテルスバッハ家が統合されることになりました。 統合されたヴィッテルスバッハ家の首都はミュンヘンに置かれました。
---ハノーファー選帝侯国---
この頃になって登場してきた主要領邦の一つにハノーファー公国があります。
この国の歴史は古く、ハインリヒ獅子公まで遡ります。
獅子公の重要な拠点にブラウンシュバイクとリューネブルクがありますが、獅子公の失脚の後、これらの地域のみ
獅子公の子孫に残されて、成立したのがブラウンシュバイク・リューネブルク公国です。この国は分割相続を繰り返し、更に力を弱めていくのですが、そうした分国の一つに、ハプスブルク家に積極的に協力し、 選帝侯の地位を得た家があります。 それがハノーファーに拠点をもつハノーファー公国です。 この家が分割された緒家を徐々に吸収して勢力を強め、ついにはイギリス王位まで射止めます。 その王がイギリス国王ジョージ1世、ドイツ名ゲオルク1世です。 権力基盤が弱かったせいか、それともイギリスに興味がなかったせいか、イギリスで「国王は君臨すれども統治せず」の立憲君主制の 基礎が固められたのは、このハノーファー王朝時代です。 イギリスは女王ヴィクトリア時代に黄金期を迎えますが、ヴィクトリア女王はハノーファー王朝最後の王です。
---その他の領邦国家---
その他の有力領邦国家としては、シュトゥットガルトに首都を置き、シュヴァーベン地方を支配する
ヴュルテンベルク公国、ヘッセン地方南部のダルムシュタットに首都を置く
ヘッセン・ダルムシュタット方伯、バーデン・バーデンに首都を置く
バーデン辺境伯などがあります。ヘッセン・ダルムシュタット方伯はかつてシュマルカルデン戦争で主導的な役割を果たしたヘッセン方伯の死後分割相続された 遺領の一つです。 また、かつて栄華を誇ったハンザ同盟は、新大陸の発見によって貿易の主軸がバルト海から大陸間貿易へ移ったことで、 かつての勢いを失い、三十年戦争での荒廃が追い討ちをかけたことで、バルト海交易の主役すらスウェーデンやネーデルランドに 譲っていました。 この頃でも自由都市としての独立性を保っていたのは、リューベック、 ハンブルク、ブレーメンといった特に力のある都市だけでした。
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