******ローマ遺跡******
インドに住んでいる友人が訪ねてきて、ドイツの世界遺産を訪問したいというので、
トリーアを訪問することにしました。
トリーアはドイツ最古の都市と言われています。
ゲルマニア制服を目指すローマ帝国が、攻略の拠点として建設したのが、ここトリーアです。
ドイツで同じくらいの歴史をもつ都市は、アウグスブルク、ケルン、マインツくらいでしょう。それの都市でも、トリーアの歴史の長さには及びません。
さて、到着してまず向かったのが、マルクト広場です。ここで昼食をとりました。
ソーセージにザワークラフト、グーラッシュ(ビーフシチュー)とホワイトアスパラと、典型的ドイツ料理のオンパレードを注文。
文句なく美味しいと勧められる料理です。
さて、トリーアに残るローマ遺跡の中でも最大の見所がポルタ・ニグラです。
ラテン語で黒門を意味するこの門は2世紀に市街をぐるりと囲む城壁の北門として建設されました。
この威容は素晴らしい。
トリーアは第二のローマと称されたと言われていますが、この威容はまさにローマを思わせます。
当時のローマ人は蛮族が跋扈する異国の地に、故郷ローマと同じような都市を建設して、望郷の想いを慰めていたのでしょう。
これを見るためだけでも、トリーアに来る価値があります。
歴史的価値も高く、もちろん世界遺産です。
世界遺産マニアの友人は、さっそく模型を購入していました。
世界遺産の模型を集めるのが趣味だとか。
同じ世界遺産でも、ライン川や、ベルリンの博物館島などでは、そういう模型はないでしょうから、トリーアを選んだのは正解でした。
さて、それだけローマの影響の強かったトリーアには、やはり大聖堂があります。
トリーア大聖堂には大司教がおられますが、そのトリーア大司教は選帝候の一人です。
選帝候は神聖ローマ皇帝を選出する選挙権をもつ実力者。
選帝候で大司教は3名のみです。
他の2名はケルン大司教とマインツ大司教。
いずれもローマ以来の歴史をもつ街の大司教。
ローマ以来栄えてきた重要都市には、やはり重要な大司教が配されているわけです。
当然ながら、それだけ重要なトリーア大聖堂は素晴らしい教会でした。
これも世界遺産です。
続いて訪れたのがカイザーテルメン。
皇帝のテルマエ、すなわち温泉です。
風呂好きのローマ人は、こんな辺境の街にもテルマエをつくったわけです。
もっともローマらしい遺跡といっていいでしょう。
先に圧巻のポルタ・ニグラを見ていた分、期待も大きかったですが、遺跡の魅力としてはポルタ・ニグラには及ばない印象でした。
ところで、このカイザーテルメン、皇帝の温泉という意味ですが、その皇帝とは大帝コンスタンティヌスです。
コンスタンティヌス帝が即位した時代はテトラルキアといい、4人の皇帝が共同統治する時代で、コンスタンティヌス帝が父の代から、本拠地としたのがここトリーアです。
ここで育成した軍団を率いて、コンスタンティヌス大帝はローマ帝国再統一を果たすわけです。
戦争で疲れた体をこの温泉で癒やしたのでしょうか。
もっとも、ここはただの温泉ではなく、マッサージ施設にジムまで揃えた総合スパランドというべき娯楽施設だったようですので、むしろ戦場の無聊を慰めたというほうが正しいかもしれません。
さて、次に向かったのが、円形劇場です。
かつて、トルコのローマ遺跡、エフェソスの円形劇場に感激した記憶があり、その上あのポルタ・ニグラの素晴らしい遺跡を見た後では、期待も高まります。
が、、、観客席は跡形もなく、およそローマ遺跡と呼ぶには、象徴たるはずの石組の跡がありません。
正直なところ、中へ入ってみてがっかり、でした。
が、一見しただけでは気がつかない見所が、この円形劇場にはあります。
珍しく地下室が、現存しているのです。
この地下室には舞台の昇降を操作する機械が設置されていたと言われています。
この円形劇場は、西暦100年頃の建設。
そんな大昔に、これだけの大空間の地下室を建造できたローマの技術力の高さに驚かされます。
ローマはその土木技術の高さで世界を制したとも言われるだけあります。
ところで、トリーアは世界的有名人の生誕地です。
世界に与えた影響の大きさでいえば、これ以上の人物はいないかもしれません。
カール・マルクスが、その人です。
有名な資本論で、共産主義を理論的に体系だてて、後のソ連を始めとする共産主義国家を理論面で支えることになります。
が、本人はそうした国家の誕生をみることなく他界。
共産主義国家誕生は歴史の必然と主張していたマルクスからすれば、生前にそれを見ることがなかったのは無念だったかもしれません。
もっとも、レーニンのソ連が彼の理想だったかは疑問の余地がありますが。
そのマルクスの生家がトリーアに残っています。
今は博物館になっているようですが、時間の都合で外から眺めるだけにしました。
世界に多大なる影響を与えた人物の博物館、次の機会があれば、見学してみたいものです。
ところで、トリーアはルクセンブルク国境近く。
ルクセンブルク観光と組み合わされることが多いのですが、国境を越えないという私の妙なポリシーが邪魔をして、ルクセンブルク観光はお預け。
今思えば、もったいなかった気がしなくもないです。