******ローラン・ギャロス******
パリにやってきた最大の目的は、ヴェルサイユ宮殿でもなく、ルーヴル美術館でもなく、オペラ座でもありません。
全仏オープンテニスこそ私の最大の目的でした。
別名を会場名からローラン・ギャロス。
四大大会唯一の赤土のクレーコートです。
ウィンブルドンは抽選ですが、全仏オープンテニスは早い者勝ちで、決勝だろうと何だろうとチケットを確保できます。
何月何日の何時頃予約開始とアナウンスされ、予約開始とともに、予約ボタンかまホームページ上に現れて、それをクリックすると、只今何人待ちです、と表示される仕組みです。
この何時頃、というところがミソで、本当のところ何時予約開始か分からない。
こまめにチェックするしかないわけです。
私が予約開始に気がついたときは、アナウンスされていた時間の数10分前だったと思います。
そのときにはすでに長蛇の列
私の目的は、やはり男子で、準決勝でもいいから見たかったのですが、私の番がまわってきたときには、男子は準決勝どころか準々決勝も埋まっていました。
が、なんと女子の方は決勝がまだ空席あり!
迷わず、この女子決勝のチケットを購入して、この日を迎えたわけです。
が、私の願いが天に通じたのか、何と前日の男子準決勝ジョコビッチ対マレー戦が、雨天のため、試合途中で翌日に順延。
チケットは、日で決まっているので、なんとこの男子準決勝を見ることが叶いました!
この大会最大の注目は、何といっても、王者ジョコビッチの生涯グランドスラム達成なるか?という点でした。
この時点で8個のグランドスラムタイトルを持ちながら、王者ジョコビッチが全仏だけ優勝がないのは、クレーコートの王者・ナダルがいたからです。
そのナダルを準々決勝で下し、いよいよ生涯グランドスラム達成への期待が高まりました。
が、今回のジョコビッチにはドローが厳しい。次なる関門は、この年のクレーシーズンを絶好調で迎えたナンバー2のマレーでした。
ビッグ4のうち、かつて二人で一時代を築いたナダルとフェデラーに衰えが見られ、ジョコビッチとマレーの二強時代到来を予感させる中の大会でした。
すなわち、事実上の決勝戦ともいえる対戦が準決勝で実現したのです。
前日の雨天順延で、これを見ることができるようになった私の喜びを理解して頂けるでしょう。
前日はセットカウント2-1とジョコビッチリードで迎えた第4セットを3-3となったところで順延。
つまり、ジョコビッチがあと3ゲームを取ると試合終了。
それよりは、このセットをマレーが取って、ファイナルセットへ突入して、少しでも長く試合を見たいのが、人情というもの。
そう思ったのは私だけではなかったようで、マレーのファーストネームであるアンディコールの大合唱で会場はマレーへの応援一色。
それに奮起したのか、マレーの気迫がすごく、マレーがセットを奪ってファイナルセットへと突入。
ここからのジョコビッチが冷静でした。
鉄壁のディフェンスでマレーのショットを跳ね返すと、隙をみて、ウィニングショットを叩き込み、ファイナルセットは6-1と圧巻の試合展開をみせて、決勝進出を決めました。
決勝の相手は、準々決勝でフェデラーを破ったワウリンカ。
前年の全豪で優勝しているとはいえ、ビッグ4には数えられないワウリンカが相手となれば、ナダルとマレーを撃破したジョコビッチの生涯グランドスラム達成は確実かと思われました。
が、ナダルとマレーという大きな壁を二つ突破した疲れからか、決勝はワウリンカが勝利。
生涯グランドスラムは持ち越しとなりました。
この全仏決勝の敗戦に発奮したのか、ジョコビッチはグランドスラム四大会連続優勝を果たし、一年後に悲願の全仏制覇と生涯グランドスラムを達成することになります。
ジョコビッチ時代到来のきっかけになった大会といっていいでしょう。
一方のワウリンカは、翌年には全米も制し、ビッグ5の一角に名を連ねました。
ワウリンカにとっても、この全仏制覇は大きな意味をもった大会となりました。
さて、午後はいよいよ女子決勝です!
ビッグ4が実力拮抗していた男子と違って、女子は女王セリーナ・ウィリアムズ一強という状況。
が、この大会は、その女王セリーナ・ウィリアムズが風邪で、明らかに本調子ではない中、迎えた大会。
それでも、決勝まで進んでくるのが、女王たる所以。
この時点で19回のグランドスラム優勝を誇り、シュテフィ・グラフの22回のグランドスラム優勝回数を既に射程に捉えるセリーナにとって、この全仏は通過点に過ぎなかったのかもしれません。
その女王セリーナが決勝で迎えるのは、やや意外な相手で、第13シードのサファロバ。
マリア・シャラポワ、アナ・イバノビッチという実力者を倒して決勝に進出してきたサファロバの勢いは本物といっていいでしょう。
それより何より、この年の全豪ダブルスで優勝している実績が、この人の実力を示しているといっていいでしょう。
とはいえ、女王セリーナはさすがに難関です。
しかし、この日のセリーナは風邪が長引いているらしく、ウォームアップも、なんと長袖。
プレーを見ていても、セリーナらしからぬプレーが多く、本調子ではないのがはっきり分かりました。
が、それ以上に固かったのが、サファロバでした。
ダブルスではグランドスラム決勝の舞台を経験しているのですが、やはりシングルスは違うのでしょうか。
それとも、これこそが女王セリーナのプレッシャーなのか。
第一セットは、セリーナが圧倒し、6-3で先取。
が、ここから、サファロバが吹っ切れたのか、徐々に良いプレーを見せ始めます。
一転して、第二セットは一進一退の展開。
こういう展開になると、お互いに良いプレーが飛び出すようになって、私などは興奮しきりでした。
それでも、セリーナがブレイク一つリードしてサービング・フォア・ザ・マッチに。
サファロバはこれを凌ぐと、第二セットを7-6で取って、ファイナルセットへ突入しました。
その勢いそのままに、サファロバは第三セットも2-0とリード。
第二セットから4ゲーム連取して、このままサファロバの流れかと思いました。
ここで、セリーナのスイッチが入りました。
もう一段ギアを上げたセリーナのプレーは圧巻でした。
ここから、なんと6ゲームを連取。
これぞ女王という圧巻のプレーでした。
これこそが女王セリーナの本当の姿なのでしょう。
グランドスラム20個目のタイトルをセリーナは手にしたわけです。
試合後のインタビューがまた女王の貫禄を感じました。
かつて、言動を批判されたことが嘘のように、対戦相手のサファロバを賞賛し、女王の余裕を見せていました。
さて、夕食は、有名店ル・コントワール (Le Comptoir)へ。
しばらく並んでようやく入店。
ここで、奇跡が起きました。
妻の友人に会ったのです。
フランスに住んでいる友人ではなく、我々と同様にフランスに旅行でやってきたとか。
ルーヴル美術館などの超有名観光地で会うならともかく、レストランで会うとは驚きです。
さて、レストランです。
有名店だけあって、味は大いに満足いくものでした。
並んだ甲斐がありました。