******ストライキ******
この日の朝6時、私はレーゲンスブルクに向かうべく、デュッセルドルフ中央駅にいました。レーゲンスブルクは遠いので、頑張って早起きをしたわけです。
が、どうも様子がおかしい。構内ではしきりにアナウンスが流れ、行き先掲示板には見慣れない文字が。
列車の遅れ程度の案内なら、ドイツ語であっても読めるのですが、この日の案内は私にはハードルが高かった。
が、分からなくとも、何か良からぬことが発生しているらしき予感がしました。
思い当たるのは、数日前に聞いたドドイツ鉄道ストライキのニュース。
悪い予感は当たるもので、そのうち英語放送で私が乗る予定の列車がキャンセルされたと聞こえてきました。
やむを得ず一旦帰り、ネットで払い戻しの手続きと、ホテルのキャンセル手続きを済ませた後、ふてくされて眠りにつきました。
******ライン川ドライブ******
このまま諦めては男がすたる!と、むくっと起き上がったのが9時頃。
地図と睨めっこして目に入ったのがローレライです。この距離なら日帰りが可能。
ただローレライに行くだけでは面白くないので、ライン川ドライブをしよう、と。
デュッセルドルフから向かう場合、ライン川ドライブの入口はコブレンツ。そこからライン川沿いを南下。
最初の目的地はブラウバッハ城。なかなか姿形のいいお城です。
ガイドブックによると、中世の姿をそのまま残しているとか。
時間があれば、内部の見学もしたかったところですが、始動が遅かったので、断念。
ところで、ライン川沿いには、ガイドブックに載っているような城に限らず、雰囲気のいい古城が次々と登場します。ロマンチック街道と並んで、ドライブの楽しい道といって間違いないでしょう。
古城とライン川を楽しみながら向かった先が、ライン川ドライブのハイライト、ローレライです。
ここは何としてもハイネのローレライに登場してもらわなければならないでしょう。
なじかは知らねど心わびて
昔のつたえはそぞろ身にしむ
さびしく暮れゆくラインのながれ
いりひに山々あかくはゆる
うるわしおとめのいわおに立ちて
こがねの櫛とり髪のみだれを
梳きつつくちずさぶ歌の声の
くすしき魔力に魂もまよう
こぎゆく舟びと歌に憧れ
岩根もみやらず仰げばやがて
浪間に沈むるひとも舟も
くすしき魔歌うたうローレライ
ラインを下っていると、どこからか美しい歌声が聞こえてきて、見上げれば岩の上に黄金色の髪をした美しい乙女が座っている。その歌声に聞きほれた船乗りが舵を誤り、船は波間に沈んでいく。
悲しい詩ですが、その美しさは比類ありません。
金色の髪をした美しい乙女が歌声を響かせている姿が目に浮かぶようです。
ローレライの岩場のあたりは船の難所。
美しいローレライの精霊に誘われたことにして、波間に沈んだ船乗りの霊を慰めたのかもしれません。
ローレライはライン川下りのハイライトでもあります。
川下りの船はローレライの歌を流しながら通り過ぎていきました。
ところで、私の主観を述べれば、ローレライは下から眺めるものではありません。
下から眺めるとただの岩があるだけで、面白くも何ともない。
何としても、ローレライの岩場からラインの眺めを見るべきです。
私は直接ローレライの駐車場に車を置きましたが、ザンクトゴアルスハウゼンの町から登ってくることもできるようでした。
ローレライの岩場から眺めるライン川は実に雄大です。
川を眺めながら、ローレライに誘われた船乗り達を思って、しばしそこに佇んでいました。
ローレライの話が長くなってしまいました。
旅を先に進めましょう。
既に述べたように、ライン川沿いには古城がたくさんあります。
そのうちの一つがローレライから見えるねこ城。
可愛らしい名前に似合わない無骨な城です。
更に車を進めると、川の中洲に可愛らしい城が見えてきます。
これがプファルツ城。
選帝候の一人であるプファルツ伯がライン川を航行する船から関税をとるために築いたと言われています。
さて、この日最後の目的地がエーベルバッハ修道院でした。
古くからワイン醸造をしていることで知られています。
そう、言うまでもなく、目的はワインです。
昔の醸造設備を見学した後、さっそくワイン販売所でワインを購入。ドイツといえば、ビールのイメージですが、ワインも白はなかなか美味しいのです。
ところで、帰り道のこと、ナビが川のほうへと案内するのですが、どう見ても橋なんかない。
不思議に思いながらも進んでいくと、なんとフェリー乗り場でした。
ナビが、フェリー航路を含めて案内するとは驚きです。金額は確か4ユーロだったかと思います。
リューデスハイムから対岸のビンゲンに渡り、そこで夕食をとって帰りました。ただ、ビンゲンは店の数が少なく、リューデスハイムで探すほうが賢明だったかもしれません。