******カーニバルの幕開け******
ドイツ西部には5つの季節があると言われます。
その
5つめの季節がやってきました。
カーニバルです。
ドイツ三大カーニバルと言われるのが、ケルン、デュッセルドルフ、マインツです。
最初のターゲットはマインツに定めました。
マインツはドイツにおいて屈指の歴史の長さを誇ります。
街の歴史はなんとローマ時代まで遡ります。
ローマ時代のドイツはゲルマニアと呼ばれる未開の地。
カエサルが当時ガリアと呼ばれたフランスを征服して、初めてローマの勢力がゲルマニアに及ぶようになります。
そのローマが属州という占領地政府を初めてゲルマニアに作ったのが、紀元前27年頃。
その州都こそ現在のマインツなのです。
その後、西欧世界にキリスト教が広まると、この地方の中心都市マインツには大司教座が置かれます。
当時の大司教様は、皇帝も憚るほどの権力をもっており、その富と権力の象徴こそ、このマインツ大聖堂です。
ドイツの大聖堂といえば、ケルン大聖堂が有名ですが、ケルン大聖堂はゴシック様式なのに対し、マインツ大聖堂はロマネスク様式。
私はロマネスク様式でこれほど素晴らしい大聖堂を他に知りません。
歴史的にもケルン大聖堂より遥かに古く、ここもドイツで見るべき価値のある大聖堂の一つでしょう。
外観は大聖堂というより、お城のような雰囲気もありますが、中はロマネスク様式らしい落ち着いた威厳のようなものがあり、厳粛な気持ちになります。
ロマネスク様式の大聖堂といえば、他にアーヘンも訪れましたが、アーヘンよりも荘厳さにおいて優るように思います。
さて、マインツは一人の偉人を生んでいます。
活版印刷の父グーテンベルクです。
宗教改革の口火を切ったルターの95箇条の論題が瞬く間に世界に広まったのは、活版印刷があったからで、グーテンベルクがいなければルターの成功はなかったかもしれません。
グーテンベルクもまた歴史を動かした一人でしょう。
全く政治的人間でない彼が歴史を動かしたという事実が面白い。
グーテンベルク博物館がカーニバルのため、休館だったのが残念です。
その代わりに、グーテンベルクの銅像がカーニバルの装いになっていました。
歴史を動かした偉人すら、装いバッチリ、カーニバルを待ちわびているわけです。
私もカーニバルの始まりに向けて、装いを整えなければならないでしょう。
会社のドイツ人の同僚が、「真面目な話、真面目な格好をしちゃダメだぜ。」と言っていたのを思い出しました。
正確に彼の言葉を再現すると、Seriously, you should not be serious.
カーニバルでは皆コスプレをするんだよ、と言われて、Are you serious?本気かい?と聞いた返事がそれでした。
欧米の人というのは、切り返しがウィットに富んでいて、いつも感心します。
さて、私もグーテンベルクに倣って、屋台でピエロの帽子を入手し、カーニバルの始まりに備えました。
パレードの始まりが近づいてくると、人も続々と増えてきました。
確かに普通の格好をしている人はほとんどいない。
多いのは、動物の着ぐるみで、あとは私と同じくピエロの帽子や、魔女の帽子を被っている人でしょうか。
中には、海賊や、妖精、お姫様など、気合いの入ったコスプレをしている人もチラホラ。
しかし、可愛いのはなんといっても子ども達です。
コスプレが楽しくて仕方がない、というように、それぞれ思い思いのコスプレをして、めいっぱいオシャレをしているのが、なんとも可愛い。
実はこの日のマインツのパレードの主役は子ども達。
カーニバルのハイライトはごく一部の地域を除いて、薔薇の月曜日(Rosen Montag)と呼ばれる翌月曜日なのですが、その前の土曜日にも各地で何かしらのイベントをやっています。
マインツの場合は子ども達のパレード。
幼いどころか、なんとベビーカーに押された赤ちゃんまでいました。
訳も分からず行進している子もたくさんいましたが、楽しそうな子、不安げな子、表情はいろいろで、それだけでも楽しい。
二時間も続かなかったですが、パレードを楽しむ人の明るい表情は早い春の訪れを告げるようです。