******塩の街******
大いに興味を持ちながら、まだ訪れていなかった街、それが
リューネブルクです。
ドイツ史に冠たるハンザ同盟は、この街があったからこそ栄えたといっていいかもしれません。
かつて、この町は上質の塩を産し、その交易で大いに栄えました。
人は塩がなくては生きていけません。
栄養素としては勿論のことながら、食料の保存に欠かせないものだったのです。
中世の昔、塩は白い黄金と呼ばれるほど、高価なものだったのです。
ハンザの盟主リューベックは、その塩を外洋に運び出す出口にあたる港町。
リューベックが盟主たり得たのも、このリューネブルクがあったからこそなのです。
かつて塩交易が生む利益の大きさに気が付いて、リューベックを建設したハインリヒ獅子公は、その後没落しますが、没落してもなお手放さなかったのが、ここリューネブルクです。
この町の価値の高さが分かろうかというものです。
さて、海に近づくと食べたくなるのが魚料理でしょう。
魚料理を売りにしている店を見つけて、中に入りました。
海に近づくと、魚料理を出す店が増えるのが嬉しいです。
味は感激するほどではないですが、十分に美味しかったです。
さて、腹を満たしたあとは、再び街散策です。
街には川が流れているのですが、その脇に一つ古めかしいクレーンが立っています。
中世の昔に荷揚げをするのに使われたといいますが、当然ながら手動。
私の記憶に間違いがなければ、罪人たちがクレーンの中で働いていたとか。
ともあれ、かつての栄華を偲ばせるものといっていいでしょう。
が、繁栄を誇ったリューネブルクも、塩が枯渇し、この地の中心はハノーファーへと移っていくことになるのです。
その反面、かつての美しい街並みがよく保全されて、私が今こうやって楽しむことができるというわけです。
さて、この街には非常に珍しい博物館があります。
おそらくは世界を見渡しても、ここにしかないのではなかろうか、と思ってしまうくらい珍しい。
塩博物館です。
塩の歴史、その製造法など、塩に関するあらゆることを展示しています。
かつて、こんなふうにして塩が運ばれていたかと思うと、なかなか面白いです。
別の場所で特別展示をやっていて、同じチケットで入場できるというので、そちらへも行ってみました。
入ってみると、昭和の香りがする(笑)。
それもそのはず、と言っていいか分かりませんが、50年前のドイツの一般家庭の様子を展示していたのです。
当然ながら、畳ではありませんので、昭和を感じたというのは、ちょっと不思議なのですが、醸し出す時代の雰囲気が一緒だったのかもしれません。
いずれにせよ、生活感に溢れる展示というのは、私には非常に面白く、全く想定外の楽しみとなりました。