******ルートヴィヒ2世が唯一完成させた城******
ヴィース教会の次に向かったのが、
リンダーホーフ城です。
バイエルン王ルートヴィヒ2世が築いた3つの城の一つです。
彼が築いた城のうち、最も有名なのは白鳥城の異名をとるノイシュヴァンシュタイン城ですが、実はこの城は未完成。
唯一完成した城が、ここリンダーホーフ城なのです。
ルートヴィヒ2世は国家財政を傾けるほどの豪華な城を3つも建てようとしました。
そのうちのノイシュヴァンシュタイン城とヘレンキームゼー城は、あまりに豪華過ぎて、建設に時間がかかり、そのうちにルートヴィヒ2世はまるでミステリー小説のような不可解な死を遂げてしまったわけです。
唯一完成したリンダーホーフ城は、時間軸でいうと、ノイシュヴァンシュタイン城の次に着工した城で、これが唯一完成したわけは、規模の小ささにあります。
小さいとはいえ、ルートヴィヒ2世が細部にまでこだわって建てただけあって、内部の豪華さは翌日に見たノイシュヴァンシュタイン城を超えるものがありました。
内部が撮影禁止だったのが残念です。
フランスの太陽王ルイ14世に憧れながら、現実はプロイセンに膝を屈するという政治的挫折が、ルートヴィヒ2世をして芸術の道へと走らせたとも言われています。
確かにこのリンダーホーフ城の内部を見ると、一種の芸術作品を思わせます。
リンダーホーフ城の設計は、王が細部まで決めて建てられたと言われており、まさに彼の作品といっていいでしょう。
池の噴水は高さ30mまで上がるという超大型噴水で、当時の最新技術が導入されています。
このあたりにルートヴィヒ2世のプライドを感じます。
しかし、真に唖然とさせられたのは、この城の庭の奥に作られた人工鍾乳洞・ヴィーナスの洞窟です。
これは、ワーグナーの大ファンであった王が、そのワーグナーの代表作タンホイザーを楽しむために、その一場面のヴィーナスの洞窟を再現してしまったのです。
たった一つのオペラのためだけの舞台。
さらに驚くべきことに、ここは王がただ一人でオペラを楽しむための舞台なのです。
なんという贅沢!
それも、三日三晩洞窟を暖房で暖めさせた後、リンダーホーフ城から馬車に乗って現れるとか。
こうなると、もはや王というより、芸術家というほうが相応しい感性の持ち主という気がします。
ところで、ヴィーナスの洞窟は、冬場は閉じられているので、リンダーホーフ城は是非冬が終わってからの訪問をお勧めします。
ちなみに、孤独を好む王は食事を一人でとりました。
そのため、給仕にすら会わなくてよいように、リンダーホーフ城にはエレベーター式食卓を導入しています。
また、部屋にはルイ14世や、マリー・アントワネットの肖像画を掲げ、彼らとの会話を楽しみながら食事をしていたと言われます。
孤独が好きというより、人間不信に陥っていたというべきかもしれませんね。
洞窟を見学したあとは、カフェでケーキを頂きました。
ルートヴィヒ2世の圧倒的な感性に食傷気味で、カフェでゆっくりして、少しリハビリして、次へと向かいました。
ところで、私見をいえば、ノイシュヴァンシュタイン城だけを見て満足するのは間違いです。
少なくともリンダーホーフ城、できればヘレンキームゼー城も含めた3城を見ないことには、狂王ルートヴィヒ2世の神髄を垣間見ることはできないと思います。