******ルートヴィヒ2世夢の城******
ドイツで最も有名な城である
ノイシュヴァンシュタイン城を建てたバイエルン王
ルートヴィヒ2世は生涯に3つの城を建造しています。
その中で最も大きな予算をとって建築に着手したのがヘレンキームゼー城です。
国家財政を傾けたとも言われるほど豪華な造りのこの城は、王の不慮の死のため、残念ながら未完に終わっています。
それでも、城の核になるの部分は生前に仕上がっていて、見学することができます。
有名なノイシュヴァンシュタインは後の楽しみにとっておくことにして、ルートヴィヒ2世夢の城コンプリートは、このヘレンキームゼー城から始めることにしました。
久々に夜行列車CNLを使って早朝にミュンヘン入り。
さらに列車とフェリーを乗り継いで、ようやく目的のヘレムキームゼー城に着きます。
城内はガイドツアーでの見学で、11時頃開始のツアーに参加。
早朝ミュンヘン入りしたことを思えば、やはりちょっと交通の便が悪いと言わざるを得ないですね。
さて、このヘレンキームゼー城のモデルはパリのヴェルサイユ宮殿。
フランスの太陽王ルイ14世へ対するルートヴィヒ2世の憧れが随所に現れています。
残念ながら内部撮影は禁止だったですが、ルートヴィヒ2世博物館は撮影可で、城内の調度品を少しグレードダウンしたようなものが展示されていたので、それを撮影しました。
ルイ14世の崇拝者であるルートヴィヒ2世は、ルイ14世の間を作っています。
装飾はルイ14世のシンボルカラーである赤。
また、至る所にルイ14世のイニシャルであるLの文字を配置。
ここはルイ14世に思いを馳せる部屋なので、部屋にベッドはあっても、見るためにあるだけで使うことはなかったとか。
狂王とあだ名された片鱗をここに見る気がします。
シンボルカラーが赤のルイ14世に対し、ルートヴィヒ2世のシンボルカラーは青です。
太陽王ルイ14世に対し、自らを月の王とし、青をシンボルカラーとしたわけです。
おそらく昼間の赤に対し、青は夜の色というわけでしょう。
というわけで、彼の居住空間は青に彩られています。
絶対君主であったルイ14世の太陽王に憧れながら、日陰の月になぞらえたあたりに、彼の屈折した気持ちが現れているようです。
当時は、プロイセン主導のドイツ帝国が成立し、彼の治めるバイエルンはその下風に立たされて、屈辱を味わっていたことは想像に難くありません。
それが絶対権力者ルイ14世に憧れる遠因になっているように思います。
ちなみに、彼の名前であるルートヴィヒは、ルイのドイツ名。
それも、ルイ14世に憧れる動機付の一つになっているかもしれません。
さて、ヴェルサイユ宮殿のハイライトといえば、鏡の間ですが、ヴェルサイユ宮殿を模倣したこの城にももちろん鏡の間があります。
但し、本家より22m長いとか。
この部屋に一足踏み入れると、思わず感嘆の声をあげてしまうほど、素晴らしい。とんでもなく豪華です。
本家ヴェルサイユ宮殿の鏡の間を見たことはありませんが、本家よりも遥かに豪華と言われます。
彼の生前、この豪華な広間に入ったのはルートヴィヒ2世ただ一人。
孤独の好きな王は、他の誰も入ることを許さず、独りきりで素晴らしい空間を堪能したとか。
この部屋を作るために、国家財政を傾けるほどの予算をかけたと言われますが、彼がこの城に滞在したのは、わずか9日ほどだとか。
本当にルイ14世を偲ぶためだけに作った城なのです。
とても正気とは思えません。
この城はとにかく豪華なのですが、鏡の間と並んで素晴らしいのが、マイセン焼きのシャンデリアです。
数多くのシャンデリアを見てきましたが、これほど素晴らしいシャンデリアは他に知りません。
全て高価なマイセン焼きで作っているわけで、これも莫大な費用がかかったに違いありません。
他に面白いのが、食卓のエレベーター。
孤独の好きな王はウェイターの姿を見るのも嫌で、食卓が丸ごと上がってくるシステムを開発したのです。
この全てが彼の独創。
このあたり、天才的な芸術家のセンスを感じます。
彼が王であったのは王国の不幸であり、彼自身の不幸であったと言わざるを得ません。
もっとも、彼が王であったからこそ、独創的な城が後世に残されたわけですが。
最後にルートヴィヒ2世の狂気にまつわる話を一つ。
王がこの島に上陸すると、港から城に向かう道に沿って家来達が並んで出迎えるのですが、孤独を好む王のために、家来達は王が通る道に背を向けて並んだとか。
その道と思われる道が城から湖に向けて伸びていて、そこを眺めると、背を向けた家来衆の間を抜けて一人城へ向かう王の姿がみえるような気がしました。
ところで、この城はキームゼーという湖に浮かぶ島の上に建っているのですが、ここがまた素晴らしい景色です。
湖畔にアルプスの山々が連なり、城がなくても、美しい景色を楽しめます。
湖畔でゆっくりくつろぐ人を多く見かけました。
この日はこの年初めて春の陽気に包まれ、湖畔でくつろぐ人も楽しげでした。
私も春の陽気に誘われて、外で昼食をとることにしました。
メニューはキームゼー湖のお魚料理。
ドイツで魚のフィレが美味しいことは稀なのですが、ここの魚は文句なく美味しかったです。
味付けはあっさりでした。
春の晴天の下、キームゼー湖の美しい景色を眺めながら、美味しいビールを飲み、魚料理に舌鼓を打つ。
至福のひとときを過ごしました。