******ハーゲンベック動物園******
さて、
ハンブルクという都市の面白さはその多面性にあるといっていいように思います。
かつて
ハンザ同盟の有力都市として栄えた
歴史ある港町。
それでいて、今もまだドイツ第2の都市としてドイツ経済を支える大都市。
意外と知らない人が多いですが、あのミュンヘンやフランクフルトよりも大きく、
それどころか同じく港町で大都会のイメージがある隣国オランダ・アムステルダムの倍近い人口を抱えているのです。
とんでもない大都会なわけです。
かつてのハンザ都市の誇りがそうさせるのか、自由ハンザ都市ハンブルクというのが
正式名称です。
また、一つの市で州を形成しているというのも、首都ベルリンを除けば、他に同じ
ハンザ都市のブレーメンがあるだけ。
ここにも誇りの高さを感じさせます。
経済面もさることながら、文化面でもハンブルクは最先端です。
なんといっても、ハンブルクはジャズの聖地。
かのビートルズも下積み時代をここハンブルクで過ごしたとか。
また、ミュージカルではベルリンと並ぶ、いやその上をいくかもしれない存在で、北欧各地から
ミュージカルを見にハンブルクへやってくるとか。
まさに文化面でも最先端都市というわけです。
そうした文化的先進都市ハンブルクを象徴するものがハーゲンベック動物園です。
いや、まあ、誰かがそう言っているわけではなく、自分が行ったのでそう思いたいだけですが。。。
でも、そういってもおかしくはないくらい、ここは革新的な動物園なのです。
創立1907年なので、格別歴史があるわけではありませんが、檻や柵を使わずに展示
したというのは、この動物園が世界初。
おかげで動物たちとの距離が近く感じられるというわけです。
まさにドイツの旭山動物園、という感じですが、その歴史からいえば、この表現は少々語弊があるかもしれせん。
むしろ、旭山動物園が日本のハーゲンベック動物園というべきでしょうか。
いわゆる観光地ばっかりいっても面白くない。
日本にもあるけど、日本とはちょっと違うものを見てみたいと思っていた私の目に留まったのがこの動物園でした。
旭山動物園に行ったことがないので比較はできませんが、柵がないというのは、私にとってはかなり新鮮で、
動物たちとの距離の近さはハンパじゃなかったです。
すぐにでも動物たちのもとへ行けそうな錯覚を覚えるくらいでした。
実際には堀があるので、行けないのですが、草や木などでそれを見せない工夫がされていて、
特に子供さんの目線ではほとんど気がつかないんじゃないかと思います。
なにより嬉しいのが、象への餌やり。
象が鼻を伸ばして餌を取りにくるというのは、やっぱり子供たちはかなり嬉しそうです。
ガイドブックにはキリンへも餌やりができると書いてあったのですが、寒さのせいかキリンの展示はなかったのが
残念でした。
オランウータンのところでは、ロープが張り巡らされて、ロープをつたって移動する様子などが見られるように
なっていました。
まさに旭山動物園!と思いましたが、困ったことに私はその旭山動物園に行ったことがない。
帰国したら、比較のために一度旭山動物園に行ってみなければなりませんね。
ともあれ、大人が行っても十分に面白い動物園で、子供ならなおさらでしょう。
子供がいれば、是非一度連れて行ってあげたい動物園でした。
少なくとも、旭山動物園に興味がある方なら、ハーゲンベック動物園、是非お勧めといっていいでしょう。
******ハンブルガードーム******
ハンブルクの夜といえば、
ジャズ!
と、いう思いもあったのですが、ちょうどこの時期はハンブルガードームの時期。
春、夏、冬の年3回開催されるらしいので、どうしてもこの時期でないと、というわけではなかったのですが、
せっかく開催される時期に来たからには、訪ねてみたい。
ホテルに観光案内のお姉さんがいたので、オクトーバーフェストのようなものか?と聞くと、それは違う、
オクトーバーフェストはビールばっかりだからね、と。
じゃあ、Kirmes(移動遊園地)のようなものか?と聞くと、まあ、それが近いかな、とのこと。
なるほど、それなら想像がつきます。
私の住むデュッセルドルフには、夏にKirmesという移動遊園地がやってきます。
何もないところに、突然遊園地ができあがり、期間が過ぎると突然消え去ります。
このハンブルガードームも同じようなもの、といういうことでしょう。
実際に行ってみると、デュッセルドルフのKirmesに比べて、屋台の割合が多かったように思います。
私はここで、この冬初のグリューワイン(Grühlwein)、要はホットワインですが、それを飲みました。
香辛料が入っているので好みは分かれますが、冬の寒さにはありがたい飲み物です。
クリスマスマーケットでしか飲めないかと思っていましたが、冬ならどこでも飲めるのかもしれませんね。
ところで、ここの遊具、組み立て式のはずなのですが、そうとは思えないクオリティの高さ!
日本では遊園地に閑古鳥が鳴いているとか言いますが、こういった移動式遊園地だと期間限定の希少価値が
加わるせいか、すごい人出。
遊園地なんて通年で楽しむもんじゃないよ、祭りのときだけで十分!というドイツ人の合理性をみる思いです。
帰りは市庁舎前を歩いて帰ると、市庁舎前には、なにやら屋台の列が。
まだ屋台は開いておらず、広場の入り口も塞がっています。
と、よく見れば、中央部分にはクリスマスツリー!
そう、どうやら月末から始まるクリスマスマーケットの準備が既になされていたのです。
ここを見ると、クリスマスマーケットも時期に合わせて来たらよかったー、との後悔もちらり。
が、それは二兎を追うものでしょう。
欲はかくべからず、です。
******フィッシュマルクト******
ドイツ人にハンブルクに行くといえば、まず十人に九人は
フィッシュマルクトを挙げます。
日曜日の朝に開かれるこの市場は、ハンブルクの代名詞といっていいでしょう。
私にとっても、まさにハンブルクへ来た目的の一つ。
ホテルでの朝食は取らず、起きて早々にフィッシュマルクトへと向かいました。
到着は8時半くらいだったと思いますが、既にかなりの人出。
終了は9時半ですから、むしろ遅い到着といったほうがいいのかもしれません。
しかし、ここは、私の期待を越えて面白かったです。
第一に活気がある。
魚屋のお兄さんが、これもこれも、まだこいつも加えて、たったの20ユーロ!とか叫んでる。
客が俺は10ユーロで買いたいというと、じゃあ、これとこれとこれで10ユーロ!どうだ!とか、やりとりを
してるわけで、見ているだけで面白い。
売っているのは魚だけではなく、果物、お菓子、花、、、なんでもあります。
そして、安い!私もチーズの盛り合わせを10ユーロで買って帰りましたが、消費しきるのになんと2ヶ月かかりました。
面白かったのは、その中に日本のチーズが混じっていたこと。
それも、フランスからの輸入品。それをハンブルクで買うというのは、何とも面白い。
また、小さな女の子がお金を握りしめて、お菓子屋さんの前に。
お菓子屋さんのお兄さんが、威勢良くお菓子を袋に詰めて、これでどうだ!と。
女の子は首を振って、お兄さんは困った顔。
よし!と、一からやり直し。これとこれなら、どっちがいい?と聞きながら袋に詰めていく。
たまに、両方!と答えて、お兄さんを困らせていたけど、結局は満足して買っていった。
いやぁ、どうにも面白い。
さて、フィッシュマルクトに来た以上、食べなくてはならないものがあります。
フィッシュバーガーです。
これがまた美味しい!
港町ですが、生ではなくて、酢漬けですが、それでも美味しい。
やっぱり日本人としては、魚が美味しいというのは嬉しいです。
******ミニチュアワンダーランド******
さて、ハンブルクに来たら見たかったもの。
それは、何よりも
ミニチュアワンダーランドです。
鉄道好きのドイツ語の先生に勧められ、ホームページを見てみたところ、一気に私の心は奪われてしまったのです。
私は別に鉄道好きでもなんでもないのですが、これはいけません。
大人になった私の中に潜む子供心を完全に掌握しました。
もちろん、この先生が勧めるからには、鉄道模型もあるわけですが、それに限らないのが凄いところ。
入ってすぐに、ドイツの時代に沿った変遷をみせてくれるジオラマがあります。
原始時代から始まり、中世、近世、そしてナチスの時代を経て、現代へ。
私にとって興味深かったのは、ナチスから近代にかけてで、ナチスに熱狂する群衆、その後軍国主義化され、
焼け野原となり、復興の最中に軍が都市を分かち、国境を越えるための検問所ができ、国境の鉄条網は壁となる、
という現代史がまさにそこに表現されていました。
そして、ベルリンの壁崩壊。
ミニチュアの人間一人一人の表情の豊かなこと。
まさにそこにドラマがある、そんな感じで、ちょっと感動してしまいました。
さて、このミニチュアワンダーランドで嬉しいところが、ミニチュア達が動くことです。
結構、いろんなミニチュアが動きます。
最も多い動くミニチュアはやっぱり列車です。
広い館内を縦横無尽に走り回ってくれます。
鉄道好きでなくても、これはやっぱり嬉しい。
止まっているより動いている方がいいに決まっています。
そして、何より嬉しいのが、芸の細かさです。
よく見ると、ちゃんと乗客がいるんですよ。
ほとんど見えないのに。
しかも、それぞれ表情が違う!
見えないところ(厳密には見えますが)まで細かい仕事をするのは日本人だけかと思いましたが、
ドイツ人もこういう仕事をするんですね。
それを知ったというのは、私にとっては嬉しいことでした。
ところで、この博物館最大の見所は、飛行場でしょう。
離陸、着陸、そしてゲートへ。
そういった一連の流れを、本当の空港のように再現してくれます。
飛行機はちゃんと飛びますし、なんと音も出ます。
電光掲示板には、フライト情報が載っていて、次に何が着陸するのか、離陸するのかもちゃんと
分かるようになっています。
機体も、ルフトハンザはもちろん、KLMオランダ航空などの欧州系航空会社に、タイ航空などの
アジア系航空会社も。
ハンブルク空港をモデルにしているせいか、日系航空会社が見あたらないのが残念でしたが、
臨場感たっぷりで、人の集まりもここが一番でした。
また、世界各国の都市を再現したミニチュアもあり、それもまた面白かったです。
スイス・オーストリア・スカンジナビア諸国などがありました。
残念ながら日本はまだなかったですが、増築しているので、いつの日かできれば嬉しいですね。
もちろんドイツ各都市もあり、ハンブルクに、ノイシュヴァンシュタイン城など、
見てどこか分かる場所があると、つい嬉しくなってしまいます。
******市庁舎******
ところで、最もハンブルクらしい景色というと、私見を述べれば、このミニチュアワンダーランド周辺だと思います。
川の両眼に赤煉瓦の倉庫が建ち並び、大きな川には船が停泊。
これぞ、ハンブルク、という気がします。
第一印象は川幅の広さです。
これこそハンブルク隆盛の源といっていいのではないだろうか、という気がします。
かつてハンザの女王と言われたリューベックは意外に内陸のほうにあり、川幅は狭く、
大きな船が入ってこれたとはとても思えません。
ハンザ衰退の原因は様々に言われていますが、川幅の狭さは大航海時代後の大型船を港に迎えられなかったことにも
あるのではないかと思います。
それに対して、ハンブルクはハンザの要でありながら、ハンザ衰退後に大きく飛躍した都市です。
エルベ川から直接北海に通じる立地が幸いしたとも言われていますが、そのエルベの川幅こそがハンブルクに利した
のではないかとも思ってしまいます。
ハンブルクが凄いのは、ベルリンやミュンヘン、ドレスデンのように、王国の首都ではなかったにも関わらず、
これだけの大都市に成長したことです。
いわゆる自由都市というもので、どこの国にも属さない完全自治都市だったのです。
日本で言えば、かつて堺がそういった存在でしたが、長くは続かず、信長に屈服させられています。
ドイツでも多くの都市が諸侯達に攻められ屈服させられましたが、ハンブルクはドイツ帝国にも自由都市として参画。
最後まで自治を維持できたのは、リューベックとブレーメン、そしてハンブルクの3都市のみ。
フランクフルトすら自治を維持できなかったことを思えば、ハンブルクの実力のほどが分かるでしょう。
そして、そのハンブルク繁栄の象徴というべき建物が市庁舎です。
バッキンガム宮殿より部屋の数が多いのが自慢とか。
是非見たかったのですが、どういうわけかこの日は公開なし。
公式行事があるときは、見学できないと書いてあったので、何かがあったのでしょう。
残念ですが、仕方ありません。
さて、見学ができなくなったことで、ゆっくり昼食をとる時間ができました。
そこで向かったのが、前日ホテルの観光案内で聞いていたお勧めレストラン、
ブロックブロイ(Block Bräu)です。
UバーンのLandungsbrückenの駅から橋を渡ってすぐのところにあります。
ドイツでBräuとつけば、それはビール醸造所のこと。
作りたてのビールを味わうことができるのです。
ドイツでレストランに迷ったらBräuと名の付くレストランを探してみるもの一つの手ですね。
注文したのは、ニシンの酢漬け。
Herringとか、Matjesとか書いてあれば、それはニシンです。
私の経験では、まず外れない。ここでも、美味しかったです。
最後に食事に満足して、ハンブルクを去りました。