******ドイツ三大美城******
ドイツに古城が多いということはよく知られています。
それは、隣国フランスなどと違い、ドイツという国が絶対王政を確立することなく、
永きにわたり
群雄割拠の時代が続いたことと無関係ではないでしょう。
ドイツが初めて統一国家を形成したのは、1871年のドイツ帝国成立のときですが、
これも連邦国家であり、連邦を形成したのは4つの王国に、6つの大公国、5つの公国、
7つの候国、3つの自由都市に、1つの直轄州という顔ぶれです。
統一時ですら、そうですから、中世から近世にかけて、これらの国の間でどれほど攻防があったか、
想像に難くないでしょう。
そのため、フランスなどの国と違い、それらの国々は自らの国を守るため、そこかしこに城を
建設する必要があったわけで、そのおかげで今我々は個性豊かな城観光を楽しむことができるというわけです。
ドイツを代表する城といえば、ノイシュヴァンシュタイン城とホーエンツォレルン城の二つを挙げることに異論を挟む人はまずいないでしょう。
3つ目にどの城を数えるかが難題なのですが、ドイツ三大美城として今回訪ねたエルツ城を挙げる日本のツアー会社が
少なからずあります。
前記の2城が19世紀の建造なのに対し、このエルツ城は築800年を数えるまぎれもない古城です。
その上、800年もの間、一度も陥落しなかったとあって、城は創建当時の姿のまま。
当主の家系も変わっていないという希有な城です。
そして、美しい。
私にとって嬉しいのは、中世の戦乱時に建てられた実用に即した城でありながら、美しい姿を見せているということです。
ノイシュヴァンシュタイン城などは、王のロマンを具現化したような城なので、ああいう形をしていて当然なのですが、エルツ城は違います。
実用性に美しさまで兼ね備えた城というわけです。
さて、この城はコブレンツとコッヘムのちょうど中間に位置しています。
交通の便が悪く、車がないと少々不便なところで、こちらに住んでいるからこそ訪ねることができる城といえるでしょう。
駐車場には、少々不安になるくらい、少ない数の車しか止まっていませんでしたが、ともかく車を置き、標識に従って歩を進めました。
一人だとちょっと不安になるような、人気のない道をしばらく行くと、ふと視界が開け、忽然と目の前に城が現れました。
ディズニー映画なんかに出てきそうな佇まい。
突然、視界に現れるあたりも、ディズニーさながらです。
思わず歓声を上げてしまいました。
冬の間は内部を公開していないらしく、残念ながら外から見るだけでしたが、それでも十分素敵なお城です。
親切な家族がいて、エルツ城をバックに写真撮影をしてくれました。
こういうあたり、ドイツ人は本当に親切です。
ところで、この城、とても難攻不落とはいえそうにないです。
800年もの間一度も陥落しなかったというのは、戦略的価値が低かっただけなのかもしれません。
そう思えば、城は山の中、奥深くに位置し、集落からは少し距離があるうえに森に覆われて見えないわけで、
領主の城というよりは、魔女の館のようです。
ますますディズニーですね。