******ザクセン王国、華の都******
ドレスデン、いやはや音の響きが美しい。これは訪れねばなるまい(笑)。
いや、冗談はさておき、ドイツで必ず訪問したい町のリストに入れていたのがドレスデン。
かつて百塔の街と謳われた町の美しさ、それは既に写真やテレビで見て、大いなる憧れをもっていたのです。
いわずと知れたザクセン王国の首都ですが、ザクセンの歴史がまた深い。
初代神聖ローマ皇帝ともいわれるオットー大帝はザクセン公の出身。
さらに時代が下って、リューベック、ミュンヘンを建築したハインリヒ獅子公もザクセン公。
ザクセンはドイツ史にあって、最重要ポジションを占めていたのです。
それは現代におけるザクセンの名を冠した州の多さからも想像できるでしょう。
但し、ドレスデンを首都とした時代のザクセンは、かつて単独で皇帝に対抗できたほどの力はなくなっていました。
とはいえ、有力諸邦のひとつであったことは間違いありません。
さて、前置きはそのくらいにして、ドレスデンへはドイツで初めて夜行列車を使いました。
4人を指定したはずなのですが、どういうわけか6人部屋の一角。
どうやら列車のどこにも2等で4人部屋というのは存在していなかったらしく、且つ、チケットには座席番号のみしか記載なく、
4人部屋のチケットであることを証明するものがなく、納得いかないながらも、狭い6人部屋のベッドで休まざるをえませんでした。
ドレスデン到着は朝の7時。朝の始動が遅いドイツにあって、7時に到着すると何もすることがない。
おまけにすごい霧。この時期以降、朝の霧の頻度が増えました。
この時の私は理解していなかったですが、どうやら、この霧こそ冬の訪れの前触れだったようです。
******緑の丸天井******
さて、朝食をゆっくりとって時間をつぶした後に向かったのが、ドレスデン城の、
歴史的緑の丸天井
と
新・緑の丸天井。
並ぶと聞いていたので、ネットで予約をとって向かったはずでした。
到着して愕然としました。何を間違ったのか、持っていたのは全く違う日の予約。
やむを得ません。幸いにして早く着いていたので、まだ行列は少なく、なんとか朝一番のチケットを抑えることができました。
さて、ともあれ両・緑の丸天井です。。
アウグスト強王を始めとする歴代ザクセン公が集めた財宝の数々がここに展示されています。
とにかく隣国プロイセンと違って、歴代ザクセン王は芸術をこよなく愛し、それがためにドレスデンは素晴らしい文化都市と
なったわけで、ここの展示物もちょっとひと味違います。
写真撮影禁止なのが残念ですが、琥珀のチェス盤、異形の真珠を加工したちょっと愉快な真珠人形など、
ただ大きな宝石を集めただけではないところがいいですね。
エナメルをコーティングして磁器のように見せたコーヒーカップセットも実に素晴らしい。
この時代、西洋ではまだ磁器を作る技術がなく、磁器を作ることへの憧れがこうした素晴らしいコーヒーカップセットを生んだのでしょう。
また、宝石セットも他の国とはひと味違います。
全く同じ宝石セットを、エメラルド、ルビー、サファイアと違う色の宝石で3組作成。
大国と違って、大きな宝石を手に入れるほどの力がなかったということもあるかもしれませんが、それを補うそのセンスに脱帽します。
唯一ある大きな宝石が緑のダイヤモンド。
これもただ大きいだけでなく、きちんと加工されていてなかなか綺麗でした。
緑の丸天井では、思いの外時間が経過し、出たのは昼過ぎ。
朝の霧が嘘のように晴れていました。
******フラウエン教会******
さて、私がドレスデンで是非ともみたいと思っていた教会があります。
フラウエン教会です。
というのも、実はこの教会は第二次世界大戦で跡形もなく破壊された歴史をもっており、
今見ることができるのは、それが再建された姿。
それがただの再建なら、それほど興味を持たなかったかもしれませんが、これは崩れた瓦礫の山から
煉瓦を一つずつ取り出しては積んでいって、ついに再建してしまったという教会なのです。
何とも美しい物語じゃないですか。
当然すべての煉瓦を瓦礫の山から見つけることはできず、足りない部分は新しい煉瓦で補ったということですが、
元あったものを使って再建しようという精神にドイツ魂をみるような気がします。
言われなければ、再建されたものとは気づかないほど美しく再建されています。
わずかに、煉瓦の黒い部分に戦火のあとをみるくらいです。
内部がまた荘厳。実に美しいです。
さすがに有名な教会で、結構な混み具合ですが、これは一見の価値があります。
私もしばし見とれていました。
貴重な時間が過ぎていっているとも知らず。。。
******ゼンパーオペラ******
この日最大のハイライトとしていたのが、
オペラです。
それも、クラシックの盛んなドイツにあっても、格式の高い
ゼンパーオペラでの鑑賞。
会場到着は17時半頃。前にはダフ屋がいましたが、俺はチケットを持ってるんだよ、と一蹴して中へと進みました。
が、余裕綽々という顔をしていられたのはここまで。
入口でチケットを見せると、何?今日か?、と。
え?と思って聞き返すと、もう始まっているよ、と。。。チケットをよく見ると開始時間は17時。
何をどう勘違いしたのか分かりませんが、とにかく後の祭りです。
まあ、とにかく着いて来い、ということで中へ。
1時間ほどしたら休憩があるから、それまで待て、と内部を中継しているテレビの前に連れていかれました。
そこには私と同じ境遇なのか、すでに2人先客がいて、目を合わせてちょっと苦笑い。
休憩時間になって、中に入ると、なるほど素晴らしい内装です。
また、観客の服装もかなりフォーマル。ノーネクタイの人もいますが、約半分はネクタイ。
私はちょっとカジュアルなジャケットでしたので、だいぶんカジュアルな部類になってしまいました。
昔、プラハで経験したのとはかなり違うようです。
ところで、鑑賞したのはタンホイザーというワーグナーの代表作のオペラ。
初演もここゼンパーオペラで、この劇場に非常にゆかりの深いオペラです。
ストーリーは端的にいうと、騎士タンホイザーが愛欲の世界に誘われ、溺れ、王に追放されることになり、婚約者は自殺。
懺悔の旅も不成功に終わり、再び愛欲の世界に引き込まれそうになったところを、婚約者の死を知って、かろうじて正気にかえり、
タンホイザーも自殺してエンディング。
まあ、どうしようもない男の話です。
困ったことに、何一つ感情移入できない物語なのに加えて、オペラ歌手の方々が皆さんふくよかな体格をしてらっしゃって、、、
単刀直入に言うとカッコ良くないのです。
歌、音楽は文句なく素晴らしい!が、クールに感じないというのは、素人にとってはちょいと厳しいですね。
非常に人気の高いワーグナーですが、素人にはちょっとハードルが高いのかもしれません。
ところで、休憩が2度ほどありましたが、その間は外に出ることもできます。
ワイン片手に外へ出ると、非常に綺麗な夜景を見ることができました。
******フェーダーヴァイザー******
ドレスデン二日目はモーリッツブルクとザクセンスイスに寄り、夕方にドレスデンに帰ってきました。
きっと眺めがいいに違いない、と、にらんで向かったのが、日本宮殿の前の河川敷。
予想通り、最高の景色でした。これぞ百塔の街!
どうやら有名な絵画がここの眺めを描いているらしく、ここから写真を撮れば、同じ写真が撮れると、
書いてある場所がありました。ミーハーな私もそこからパシャリ。
その後、世界一美しいチーズ屋さんとして、ギネスブックにも登録されて
いるとかいうプフンズ・モルケライという店へ。
が、残念ながら店はその日の営業を終えていて入れませんでした。ホームページをみる限り、
かなり綺麗だったので見れなかったのは残念でなりません。
もっとも、写真撮影禁止だったので、行ったら行ったで欲求不満になったかもしれませんが。。。
さて、その後アルベルト広場のほうへ戻ってきたところ、なにやらお祭りが。
これは面白そうだと思って、入ってみると、予想外のものを発見。
フェーダーヴァイザーです。
日本語にそのまま訳すと、「白い羽」で、この時期にしか飲めない若いワイン。
その名の通り、白く濁っていて、羽がふわふわしているようなので、その名があるのでしょう。
厳密に言うとワインではなく、ワインになる前の発酵途中のアルコール飲料です。
実はドイツに来る前からこれを飲んでみたいと思ってはいたのですが、
ワインフェストの時期でありながら、ドイツワイン最大の産地ライン川から離れたところに来たので、
ドレスデンで飲めるなどとは全く期待してなかったのです。
そういえば、ザクセンワインは、希少価値があって他の地方にあまり出回らないとか。
そのことをふと思い出しました。
そんな希少価値のあるワイン、その上この時期しか飲めないフェーダーヴァイザー。
これは飲まない手はないじゃないですか。
ジュースのような酸味と甘みがあって、でも紛れもないアルコール。
非常に飲みやすいですが、しっかり気分がよくなってきました。
その後ホテルのレストランに行ってみると、ここにもフェーダーヴァイザーがあり、ここでも頂きました。
もちろん普通のザクセンワインも。最高です!
******システィーナのマドンナ******
ドレスデン最終日。最後に残したのがドレスデン最大の見所といっていい
アルテ・マイスター絵画館。
ザクセン王国最盛期ともいえるアウグスト強王の時代に建てられたツヴィンガー宮殿の中にあります。
宮殿自体も立派なのですが、なんといってもこの絵画館が有名です。
その中でも最も人気のある絵がラファエロの最高傑作ともいわれる「システィーナのマドンナ」
という作品。ときのザクセン王がどうしても欲しくて大金をはたいて購入したとか言われる絵画です。
確かに、この絵の存在感は群を抜いていました。
私は絵に関してまったくの素人ですが、じっと見入ってしまいました。
素晴らしいかどうかはよく分かりませんが、過去見た絵の中でも最も好きな絵になったことは間違いありません。
一通り見て回ったあと、再びこの絵の前に戻ってきてしまいました。何度みてもいいです。
その後は、隣の陶磁器コレクション博物館へ。
ザクセン王国は欧州で初めて磁器製作に成功した国なのです。
アウグスト強王は陶磁器が大好きで、隣国プロイセンがもつ陶磁器コレクションが欲しくて欲しくて、
ザクセンが誇る竜騎兵800人と交換したという逸話をもつ人物。
自国での陶磁器製作に執念を燃やすアウグスト強王は、ついに磁器製作に成功。
世に名高いマイセン磁器です。
それら初期のマイセン磁器や、王が収集した日本や中国の磁器の数々が展示されています。
それらを眺めた後、ドレスデンを去ったのでした。