******ソルブ人の町******
ドレスデンからバウツェン行きの電車の中のことです。
検札にきた車掌に、
このチケットではバウツェンに行けないと言われました。
そんなバカな。
私が買ったのは、ライプツィヒからドレスデンまでの往復チケットですが、
帰りの経由地にバウツェンを指定したのです。
こういうときは、ひるんではいけません。
相手が英語が通じなかろうと、英語に片言のドイツ語を加えて、ここを見ろ、ちゃんとバウツェンって
書いてあるじゃないか、と。
どういうわけかそれでも相手は納得せず、激しい言葉の応酬となりました。
すると、見かねた他の乗客が助け船を出してくれました。
彼女が英語で説明してくれたところによると、私が指し示していた箇所は、ただの時刻表が参照のため書いてあるだけであって、
チケットは紙の上部なのだと。
彼女が言った部分を見ると、経由地として記載があったのは、行きに指定した経由地のみ。
行きの経由地しか有効でないのか、それとも別の理由によるものかは分かりませんが、
とにかくバウツェン経由となっていないことは間違いなさそうです。
思い返せば、経由地にバウツェンを指定しても値段が変わらなかったことを思い出しました。
これは完全に白旗です。
追加料金を払えば許してくれるということで、素直に支払いました。
そして、ここにバウツェンって書いてあるから、行けると思ったのですよ、ごめんなさいね、と謝罪。
それにしても分かりにくいこと、このうえないです。
このショックは大きかったようで、バウツェンに着いたことに気づかず、いつの間にかゲルリッツ
まで来てしまいました。
バウツェンからさらに東、チェコとの国境近くの町です。
不幸にして、戻りの電車は一時間待ち。。。
ダブルパンチのミスに大きなショックを受けた私は、待ち時間を活用してゲルリッツ観光をする気力が沸かず、
美しいと称えられるこの町の観光を逃してしまいました。
それだけショックが大きかったということですが、
ともあれゲルリッツ観光をしなかったことも、この旅の痛恨時のひとつとなりました。
さて、私がふとバウツェンという町に興味をもったのは理由があります。
ドイツは単一民族国家と思われていますが、実は少数民族がいたのです。
ソルブ人と呼ばれるスラブ系の人たちです。
彼らはソルブ語という独自の言語を持っていて、ドレスデンの東、チェコとの国境近くに居住しています。
そして、その中心都市こそバウツェンなのです。
どうにも、私は少数民族の文化というものが好きなのです。
何か独特の文化というものに惹かれるんですね。
まあ、ミーハーです。
ただし、ソルブ語を話す人はどんどん減ってきているらしいです。
日本において、アイヌ語を話す人はほとんどいなくなってしまったのと状況が似ていますが、
バウツェンにおいてはソルブ語での人形劇が上演されているなど、そのアイデンティティを守ろうという
意識が高いように思います。
このまま、たとえ細々であっても、後世にソルブ文化が伝えられていってほしいものですね。
さて、駅に降り立って、駅舎を見上げると、ドイツ語と併記してソルブ語の駅名も書いてあります。
こういうものを見るだけでも、私はつい嬉しくなってしまいます。
もっとも何と発音するのかは皆目分かりません。
ところで、ソルブ人の町として知られるバウツェンですが、ドイツで
最も古いクリスマスマーケットの一つとしても知られています。
町の中心部へと足を運ぶと、クリスマスマーケットが開催されていました。
歴史的にはドイツで一番古いマーケットですが、規模はさほどではありません。
規模が大きくないので、ゆっくり楽しむことができ、私にはありがたい。
さらに散策をすすめると、中世風のクリスマスマーケットを発見。
歴史あるマーケットではそういった中世風をアピールしているところがあることは知っていましたが、
実際に見たのは初めてです。
有料でしたが、これは中に入らない手はないでしょう。
中に入る前に、門番に、写真を撮っていいか?と聞くと快諾してくれました。
うん、中世にタイムスリップした気分になってきます!
お金を払うと、手の甲にスタンプを押してくれました。
これで、何度でも出入りできるらしいです。
さて、この中世風クリスマスマーケットを歩いていると、店から声をかけられました。
どこから来たのか?と聞くので、日本だと答えます。
すると、日本人に初めて会ったよ、と、わざわざ店から出てきて、一緒に記念撮影。
なにやら有名人にでもなった気分です(笑)。
あまり日本人が観光に訪れることはないのでしょうか。
美しい町なのに、もったいないことです。
ところで、日本にもバウツェンのような歴史ある街はあるか?と聞かれ、まあ、京都かな、と答えたのですが、
あとでよく考えると、バウツェンは古都とはいえ、そこまで誇らしげにいうほどではない。
あとになってみれば、歴史あるとはクリスマスマーケットのことだったに違いありません。
お互い片言のドイツ語と英語でのコミュニケーションなので、誤解が生じてしまったようです。
私のドイツ語力のいたらなさです。猛省ですね。
さて、クリスマスマーケットといえば、何といってもグリューワインですが、
違う飲み物も飲みたくなり、ここバウツェンではアイアープンシュ(Eierpunsch)という飲み物に
挑戦しました。
Eierとは卵のことで、要するに卵酒と思ってもらえればいいです。
それにたっぷりクリームを載せてくれます。
まあ、アイスクリームを溶かして、ラムを入れて、温めて飲んでいるみたいな味。
甘くて飲みやすかったです。これもなかなか悪くないです。
時間があれば、バウツェンからの帰りにライプツィヒのクリスマスマーケットも寄ろうと思っていたのですが、
バウツェンの街散策が楽しく、思いの外時間が過ぎたので、ライプツィヒの寄り道は断念。
散々なスタートの一日でしたが、バウツェンの街が私の心を救ってくれました。